ひとことで言うと:OpenAI は今回「GPT-6」を直接出さず、Sol・Terra・Luna という三つの新名称を一気に並べた——料金ページに三つの価格が横並びで、多くの人が最初に思うのは「この三つをどう分担すれば無駄遣いにならないか?」という点だ。 以下ではこの新命名ロジックから始め、三ティアのスペック・ベンチマーク差・ChatGPT/Codex サブスク権限、開発者向けルーティングコードまで、実行可能なチェックリストとして順に解説する。
token 課金の基本がまだ曖昧なら、先に Token 価格比較 を。待っているのが整数世代の GPT-6 なら、GPT-6 リリース時期の予測記事(日本語版は準備中)が「待つ必要があるか」を整理してくれる。
なぜ今回は三モデルで、一つの「GPT-6」ではないのか?
2026 年 7 月 9 日、OpenAI は GPT-5.6 ファミリーを全量公開した:フラッグシップ Sol、バランス型 Terra、コスパ重視の Luna。その前、Sol は 6 月 26 日に信頼パートナー向け限定プレビューで先行公開済み。これは「一モデル三つの仮装」ではなく、命名ルールの刷新だ:数字(5.6)が世代を表し、Sol / Terra / Luna がそれぞれ独立進化する能力ティア——将来ある世代では Terra や Luna だけが更新され Sol は据え置き、三製品線が同一リリースサイクルに縛られなくなる。
購入判断への影響は想像以上に大きい。以前の「アップグレードするか」は単一選択だったが、今は「三ラインをそれぞれどの版まで上げるか」の組み合わせ問題になった。幸い三ティアは入力形式・ツールプロトコル・コンテキスト窓が完全に同一で、モデル切替は文字列を変えるだけ——Prompt やツール定義の書き直しは不要。
「三つの製品」と「三つの入口」を区別する
Sol / Terra / Luna はモデルティア;ChatGPT、ChatGPT Work / Codex、OpenAI API は三つの異なる接続チャネル。同一ティアでもチャネルごとに開放ルールが異なる——ChatGPT サブスク権限でチャネル別に整理する。
表で一発理解:Sol / Terra / Luna のスペックと料金
三ティアのコンテキスト窓、最大出力長、ツール対応(関数呼び出し、Web 検索、ファイル検索、computer use)は完全一致。ハードな差は価格と推論効率のみ——選定の核心は「このタスクに数倍の単価を払う価値があるか」であり、「必要機能をサポートしているか」ではない。
| モデル | API モデル ID | 入力 / 出力(100 万 token あたり) | コンテキスト / 最大出力 | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| GPT-5.6 Sol | gpt-5.6-sol(エイリアス gpt-5.6) |
$5 / $30 | 1.05M / 128K | 複雑なコーディング、科研、失敗コストの高い長タスク |
| GPT-5.6 Terra | gpt-5.6-terra |
$2.50 / $15 | 1.05M / 128K | 日常 Agent ループ、コスパ基準線 |
| GPT-5.6 Luna | gpt-5.6-luna |
$1 / $6 | 1.05M / 128K | 高並列分類・抽出、検証可能な初稿 |
公式の参照系は GPT-5.5:Terra は「GPT-5.5 と同等以上の性能でより安い」、Luna は「より速く、より省」な入門ティア。GPT-5.5 をベースにしているなら Terra への切替は「性能維持・請求削減」の無料アップグレードに近い——唯一必要なのは自社評価セットでの挙動ドリフト確認。
図解:タスク入力から実行までのルーティング経路
Sol に昇格すべきシグナル
- 複数ファイルにまたがり、多段計画と自己修正が必要
- computer use でレンダリング結果を確認したい
- セキュリティ評価、複雑デバッグ、科研級推論
- 失敗コストが高く、成功率のために数倍の単価を払う価値がある
Luna に降格すべきシグナル
- 入力構造が固定で、出力をルールや人手で素早く検証できる
- 高並列分類、フィールド抽出、タグ付け
- 信頼できる grader による再検証がある
- 量が質より優先、単価に敏感
ベンチマーク実測:高いモデルは何が違う?
OpenAI 公開ベンチマークはコーディング、ナレッジワーク、ブラウジング、セキュリティなど多岐にわたる。選定に直結する主要結果を抜粋(いずれも公式評価——本番効果は自社タスクセットで再検証を):
| ベンチマーク | Sol | Terra | Luna | GPT-5.5 |
|---|---|---|---|---|
| Artificial Analysis コーディング Agent 指数 | 80.0(新 SOTA) | 77.4 | 74.6 | 76.4 |
| Agents' Last Exam(長期専門タスク) | 52.7% | 50.4% | 50.3% | 46.9% |
| OSWorld 2.0(computer use) | 62.6% | 50.2% | 45.6% | 47.5% |
| SEC-Bench Pro(セキュリティテスト) | 71.2% | 57.7% | 48.9% | 45.8% |
読み取れる法則は二つ:コーディングと長期専門タスクでは三ティアの差は大きくない——Terra、Luna はすでに GPT-5.5 を追い越しており、日常 Agent ループに Sol プレミアムは不要なことが多い;computer use とセキュリティテストでは Sol の差が顕著——多段自己修正と精密操作が必要な場面に対応し、Sol が 5 倍高い理由でもある。
単発スコアの % だけ見ない
公式は Sol がより少ない出力 token、より短い時間で高スコアを取ると強調——単価が高くても総請求が必ず高いわけではない。評価は 100 万 token あたりの表価格ではなく「成功タスクあたりの実コスト」で、特に多段リトライがある場面。
一般ユーザー向け:ChatGPT サブスク権限対照表
ChatGPT 本体、ChatGPT Work / Codex、開発者 API——三チャネルで開放ルールが異なり、混同しやすい:
| チャネル / プラン | 利用可能モデル | 備考 |
|---|---|---|
| ChatGPT · Plus / Pro / Business / Enterprise | Sol(中 / 高推論強度) | Pro、Enterprise は Sol Pro も選択可——最高品質の複雑タスク向け |
| ChatGPT Work / Codex · Free / Go | Terra | 無料枠に Sol / Luna の手動切替なし |
| ChatGPT Work / Codex · Plus 以上 | Sol / Terra / Luna 自由選択 | タスクごとに推論強度(effort)を個別設定可 |
| max 推論強度 | GPT-5.6 権限を持つ Work / Codex 全ユーザー | 設定で手動有効化——デフォルトより遅いがより徹底 |
| ultra(マルチ Agent 並列) | Work:Pro / Enterprise;Codex:Plus 以上 | デフォルト 4 Agent 並列——より多い token 消費で速く強い結果 |
たまに ChatGPT で質問するだけなら Plus の Sol(中推論強度)で十分。Codex を日常コーディング相棒にするなら Terra をベースに、クロスファイルリファクタや本番障害調査のときだけ Sol に手動切替——常に最高ティアを開きっぱなしにしない。
開発者向け:モデル ID・キャッシュ・ルーティングコード
API で最も踏みやすい罠はgpt-5.6 エイリアスを固定版と思い込むこと——デフォルトで gpt-5.6-sol にルーティングされ、将来アップグレードで挙動がドリフトする。本番では完全モデル ID を直接指定:
# タスク種別と失敗コストで選ぶ——フラッグシップに無条件投げない def pick_model(task: str, blast_radius: str = "low") -> tuple[str, str]: if blast_radius == "high" or task in ("security_review", "multi_file_refactor"): return "gpt-5.6-sol", "high" # 失敗コスト高、推論強度最大 if task in ("ticket_tagging", "field_extraction", "draft_for_review"): return "gpt-5.6-luna", "medium" # 構造固定、人手レビューあり return "gpt-5.6-terra", "medium" # デフォルト基準線、多くの Agent ループに十分
選んだモデル、推論強度、ツール呼び出し回数、token 使用量、最終スコアを同一ログに記録して初めてルーティングを反復改善できる——OpenRouter 実利用量ランキングでも示す通り、ルーティングは実行時ポリシーでありコードに焼き付けた定数ではない。
キャッシュ課金ルールが変わった——会計も追従を
GPT-5.6 は明示的キャッシュブレークポイントと 30 分の最短キャッシュ寿命を導入:キャッシュ書き込みは非キャッシュ入力単価の 1.25 倍、キャッシュヒット読み取りは 90% 割引のまま。安定したシステムプロンプト、Schema、参照資料をプロンプト前段に置きブレークポイントを設定すれば、繰り返しコンテキストの多い Agent の実コストを大幅削減——ただし毎回内容が変わるリクエストにブレークポイントを足しても複雑さだけ増えて得にならない。
もう二つの注目機能:Programmatic Tool Calling(Responses API でモデルがプログラムを書いて複数ツール呼び出しを調整し中間結果をフィルタ——大量データの往復を減らし、ゼロデータ保持 ZDR も互換);Beta のマルチ Agent 並列(ultra の仕組み)。どちらも単一のデータ集約シナリオでベンチマーク比較してから既存の直接ツール呼び出しを置き換え、常に単 Agent へのフォールバックを残す。
6 つの実シナリオ別おすすめ
| シナリオ | 推奨ティア | 理由 |
|---|---|---|
| CS チケット分類 / フィールド抽出 | Luna | 入力構造固定、ルールや人手で素早く再検証可能 |
| 日常コーディング Agent(コード修正 + テスト実行) | Terra | コーディング指標は GPT-5.5 同等以上、価格は Sol の半分 |
| クロスファイルリファクタ / 本番障害根本原因調査 | Sol | 失敗コスト高、多段計画と自己修正が必要 |
| 長文 / 契約要約(数十万 token 入力) | Terra から、精度不足なら Sol | 三ティアとも 1.05M だが、長コンテキスト検索品質は Sol が安定 |
| セキュリティ評価 / ペンテストレポート生成 | Sol(Trusted Access 要) | Cyber 系ベンチマーク差が最大、フル能力はアカウント検証が必要 |
| 大量コンテンツ初稿(後続で人手レビュー) | Luna | 「初稿は必ずレビューされる」が公式の典型 Luna シナリオ |
セキュリティ要件:Cyber 権限の締切を見落とすな
OpenAI Preparedness Framework では Sol、Terra、Luna 三ティアともサイバーセキュリティと生化学の追跡カテゴリで「High」判定(「Critical」未満)——これまでで最も厳格なガードレールが付く。公式データでは Sol の cyber 安全柵がブロックした潜在有害活動量は前世代の約 10 倍。
セキュリティ研究 / レッドチーム / パッチ検証チーム向けの硬性期限:個人アカウントは 2026 年 9 月 1 日までにハードウェアキー対応の Advanced Account Security(Yubico 等のハードウェア Passkey)を有効化しないと、最高サイバー能力のフロンティアモデルへのフルアクセスが失われ、デフォルト権限にフォールバック。企業チームは Trusted Access for Cyber プログラムで別途申請。
- 個人— 早めに本人確認と Trusted Access 申請;9 月 1 日までにハードウェア Passkey 設定
- チーム / 企業— セキュリティチーム向け申請フローを事前計画、本番当日の権限審査待ちを避ける
- 一般開発者— 攻撃防御系タスクがなければこの制限は基本無関係、通常 API 呼び出しで問題なし
よくある誤解
- 「高いほど正解」— コーディング・長期タスクでは Terra、Luna が GPT-5.5 を追い越している。Sol 一本は無駄が多い。
- 「
gpt-5.6エイリアスで手間省略」— エイリアスはアップグレードでドリフト。本番は完全モデル ID を固定。 - 「コンテキストが大きければ検索不要」— 1.05M は選択肢であって目標ではない。長コンテキストでは Luna の検索品質が Sol / Terra より明確に劣る。
- 「キャッシュブレークポイントは何でも足す」— 毎回内容が変わるリクエストでは 1.25 倍書き込み料だけ増えて得なし。
- 「ultra は Agent 多いほど良い」— マルチ Agent 並列はまだ Beta。単 Agent + 信頼 grader を先に、並列の追加 token コストが worth か後で評価。
よくある質問
GPT-5.6 はいつリリース?三モデルは同時? Sol は 2026 年 6 月 26 日に限定プレビュー先行。Sol・Terra・Luna は 7 月 9 日に ChatGPT、Codex、API で同期全量公開、24 時間以内に全世界で段階的全量利用可能。
API の gpt-5.6 エイリアスはどこへ? デフォルトで gpt-5.6-sol。固定挙動には完全モデル ID を直接指定し、将来アップグレードによるドリフトを避ける。
Terra と Luna は Sol の劣化版? いいえ。独立進化する能力ティア。現時点 Terra のコーディング / ブラウジングは GPT-5.5 超え、Luna はコスパ最高だが長コンテキスト・高難度科研では明確に劣る。
無料 ChatGPT で GPT-5.6? 本体無料枠は旧モデルまたはレート制限新モデル中心。Work / Codex Free / Go で Terra。Sol は Plus 以上で推論強度を上げる。
一モデルしか予算がないなら? Terra から——公式の日常コスパ基準線、Sol 半額で GPT-5.5 同等以上。Sol は失敗コスト高タスク、Luna は自動採点大量タスクに。三ティアルーティングは単一モデルより通常安い。
- GPT-6 リリース時期予測:いつ出る?価格・機能・API 全面分析(日本語版準備中)
- Token とは?2026 AI モデル価格比較
- OpenRouter 実利用量ランキング:開発者が捨てつつあるモデルはどれか?
- 2026年最新 Codex インストール&使い方ガイド:GPT-5.5-Codex 完全版
- 2026 LLM 対決:Claude Fable 5 vs Opus 4.8 vs Gemini 3.5 Flash — ベンチマークと使い分け
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